Paucellier apparatus

ポースリエの機構


機械のしくみと作図ツール

機械には様々な幾何が使われています。 いままで具体物を実際に作成 しなければ観察できなかったことが、作図ツールの出現によって簡単 にシミュレーションできるようになりました。ここではポースリエという 人が発明した、円運動を直線運動に変換する機械を詳しく紹介します。機構学 (機械運動のしくみを研究する学問) では、どの教科書にものっている内容のようですが、数学教育の分野では あまり知られていないかもしれません。以下のポースリエの機構は 相似とピタゴラスの定理を学んだ中学生以上の方なら理解できる簡単な 原理をもとにして作られています。

直線をどのように描くか

ポースリエの機構とは、直線を描くための装置の1つです。直線を描くには 定規を使えばよいのですが、少し考えてみると、 「定規をつかえば直線をがける」という保証はどこにもありません。 その定規自体を作るためには、 もとの直線がなければならないからです。 それに対して、コンパスでは、必 ず円が描けるという保証があります。では、コンパスで円を描くのと同じよ うな意味で、「直線を描く装置はできないのだろうか?」という疑問が わいてきます。この議論は、19世紀後半にさかんに行われていま した。
参考書籍:「 How to draw a straight line. 」 A.B.Kempe , NCTM Classics in mathematics education
左が機械の簡略図です。各線分(以下リンク)は長さが決まった棒で 出来ています。点Aと点Oは固定されていて、点Pを点Oを中心とす る円周上を運動させると点Qにあるペンが直線を描きます。

各リンクの長さには次のような関係があります。
AB=AC,PB=PC=QB=QC.
この図は作図ツールをつかえば、10分程度で作れます。点Pを 動かすと実際に点Qが直線を描く様子を観察できます。 作図ツールで作ってみれば、昔の人が実践していた「動く幾何」を 追体験できるのではないでしょうか?

アニメーション (for Netscape 2.0) も ご覧ください。


ポースリエの機構の原理

左の図は円運動をどのように直線運動に変えるかの原理をしめした ものです。図で点Pが定円周上を動き、それに伴って点Qが定直線上 を動くようすを想像して下さい。(直線AHとHQは垂直です。また点 Aは円周上に固定された点です。)
APとAQの2つの線分の長さには、どのような関係があるでしょうか?
三角形ADPと三角形AQHは相似ですから、
AD:AP=AQ:AH
よって
AP・AQ=AD・AH=一定 = k
AQ=k/AP.....(1)
つまりAQの長さはAPの長さと反比例の関係であることがわかります。
逆に考えると、点Pが円周上を動くとき、(1)の関係を満たすように 点Qの位置を半直線AP上に決めれば、点Qは直線上を動くことになります。

それでは、(1)のように、元の長さをその逆数の長さに変える装置はどのように したら作れるでしょうか? 左の図はポーセリエの装置の一部だけを取り出した ものです。線分AQ、線分BCは補助線です。四角形PCQB は条件よりひし形なので、点FにおいてBCとAQは垂直に交わります。

AP・AQ=(AF−PF)・(AF+QF)
=(AF−PF)・(AF+PF)[ PF=QFより ]
=AF^2−PF^2
=(AC^2−CF^2)−(PC^2−CF^2) [ピタゴラスの定理より]
=AC^2−PC^2
=一定=k

つまり、この6つのリンクでできた部分において、AQ=k/APという 関係がなりたつわけです。

以上2つの数学的な説明から、ポースリエの装置において、点Pが円周上を 運動するとき、点Qは直線を描くことがわかります。